お米の値段

2025年5月27日(火)
最近はテレビのニュースでお米のことを聞かない日はありません。お米の値段が上がり、国民の生活を圧迫しております。そんな中、選挙目当てか、店頭価格で 5kg 2,000円といった政治家の発言も出ておりますが、私はお米の値段はそんなに下げてはいけないのではないかと考えます。

一つには、お米の値段が下がると(従来の5kg 2,000円台のレベルに戻ると)、お米の生産者(農家さん)にとっては赤字となります。ただでさえ後継者不足が危惧されている中で、そうした経済環境に戻ると日本の農業はますます衰退の一途をたどってしまいます。

二つ目は、その手法。備蓄米を随意契約で政府の指し値で販売するという手法ですが、値段が倍以上も離れたさまざまな価格のお米が世の中に出回ることになりはしないでしょうか。流通業者も小売店も、そして何より消費者が混乱します。安い備蓄米の争奪戦となっては消費者は疲れるだけです。さまざまな流通ルートからお米が流れてくることになり、それごとに価格が異なるという、「市場」をないがしろにする農政にはますます信用が置けなくなります。

2018年に減反政策は廃止されたとはいえ、その後も実質的な生産調整(減反の方向性)は続いております。生産者の生産環境、生産意欲を貶めてきたのではないでしょうか。それこそが昨今の米不足(価格の急騰)の元凶だと思います。お米を増産方向に持って行くためには、適正な価格での取引を目指しながらも、同時に足りない部分には公金をつぎ込むこと(農家に対する政府からの所得補償の充実。EUやアメリカ並みの増額。)が必要です。世間では以前から、「農家は所得補償されており十分に潤っているという誤解」がまかり通っているようですが、事実はそうではないようです。

そして生産者が安心して生産に打ち込めるようにするためにもその前提となる大事なことは、消費者としての国民全体が、適正な価格のお米(例えば5kg 3,500円以上)を普通のこととして受け入れることができるような経済環境を作っていくことだと思います。賃金を上げる/国による各種生活保障を拡充する/消費税を無くす、などにより格差を縮め、国民全体の購買力を高めることです。日本の社会の中で、「貨幣に裏付けられた需要」をもっと増やすことです。作り手が生産費をカバーしてさらに再生産が可能となるような適正な価格でモノが売られ、それを国民全員が無理なく買える、そのような経済・社会を目指すことが自然な発想(当たり前の政策)ではないでしょうか。

そのうえで、お米の値段の上がり下がり (天候要因等によるお米の生産量の上下や、燃料費・輸送費=ガソリン価格等の上下) が出てきた時にも、そうした価格の上がり下がりが影響を及ぼしてはならない学校給食やこども食堂(民間NPO)、病院や各種施設での食事提供などについては、常に安定した量のお米や食材が提供されるような社会的な仕組みを作ること、そうしたことも含めて政策として取り組んでもらいたいものです。食糧自給率も上げなければなりません。そして当然、天候不順などのいざという時のための備蓄米はもっと増やしていかなければなりません。 (昔200万トンあった備蓄米が100万トンにまで減ってきた、こうした背景にある「保管料が掛かるので備蓄米を減らせという財務省の意思」に農政が飲まれてしまうのもいかがなものかと思います。)

備蓄米を随意契約で放出して5kg 2,000円のお米を店頭に並べようという政策を、選挙前に延々とテレビが放送して世間がその成り行きに一喜一憂する。 - それは少し、筋が違うような気がします。

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