トランプ関税と消費税

2025年4月8日(火)
ここ数日、世の中はトランプ関税に翻弄されております。日本にも追加関税を掛けるとのことで、その理由の一つとして日本側に非関税障壁が存在するという言い方がなされております。その非関税障壁の主張には日本の消費税制度も含まれているようです。一見すると荒唐無稽な話しですが、まあ、かなりひいき目に見て次のような理屈も成り立ち得るのかもしれません。

日本の消費税のような税金は、諸外国では付加価値税(VAT : Value Added Tax)と呼ばれるのが一般的です。日本の消費税は、生産者(販売者)がお客さん(消費者)からもらった販売代金の10%に相当する消費税額から、生産者(販売者)がその商品の生産(販売)のための原料などを仕入れる際に仕入先に支払った仕入代金の10%に相当する消費税額を引き算し、その差額(生産者・販売者の手元に残った消費税額)を税務署に納税するという仕組みです。つまりこれは生産者(販売者)にとっては販売代金から仕入代金を引いた「付加価値」と呼ばれる金額に10%の消費税率を掛けた金額を納税するのと同じことです。従ってこれが世界で一般的に「付加価値税」と呼ばれる理由です。企業がその生産・販売活動で獲得した「付加価値」に、国が10%の税金を掛けますよ、という話しです。(ヨーロッパを中心に日本を含めた各国はこの付加価値税の制度を導入していますが、アメリカは導入していません。)

さらに補足するとこの付加価値税(消費税)の制度においてほとんどの国は、国内のお客さん向けに販売して獲得した付加価値に対しては課税しますが、国外のお客さんへ販売して獲得した付加価値、つまり輸出によって獲得した付加価値へは課税いたしません。もし輸出品へも付加価値税を課すとなると、その分輸出価格が高くなってしまい国際競争上で不利になり輸出量が減ってしまうことから各国は輸出品への付加価値税の課税は免除するという考え方です。もちろんそこに一理はありますが、裏返した見方をすると、同じ国内で行った企業活動に対しその販売先が国内か国外かということで課税する・しないが分かれることは、それは明らかに国による輸出優遇政策(=輸出企業は主に大企業なので、大企業優遇政策)だという話しにもなります。こうした論調は以前より一部であった話しですが、トランプ政権はそこを突いてきたのではないでしょうか。ましてや国は輸入品に対しては付加価値税(消費税率10%)を課しますので、アメリカから見ると単純にそれもまた非関税障壁に見えるのかもしれません。

そしてこのように相手のすきを突いてくるのがトランプ流の交渉術なのかもしれません。しかしながらここで落ち着いて考えていくと、トランプ政権の主張は全てがそうした相手のすきを突き、力で押してくる交渉の繰り返しのように思えてきます。そうなるとそれらの主張の一つ一つは問題の本質とは関係のない全くの小賢しい(こざかしい)議論にしか思えなくなってまいります。そもそもが今回のトランプ関税は、アメリカ国内問題についての、他国を巻き込んでの国際問題への転化でしかありません。つまりそこにあるのは、アメリカ国内に蔓延する格差の問題 (例えばIT億万長者と、古い産業に取り残された多数の労働者間の格差の問題) や、その格差を生み出したアメリカ国内での産業構造の変化の問題 (自ら製造することは止め、アイディアと権威と金融でお金を呼び込むという経済構造への変化の問題) を、他国の制度や責任の話しとして押し付けるという、問題のすり替えです。それは結果として、アメリカ国内に端を発した格差や貧困、分断、過剰生産(過剰輸入)といった問題の世界への拡散にしかならないのではないでしょうか。それでアメリカ国内の問題が解決するとも思えません。大義や理念を見失うと、世界の大国もかくも簡単に小賢しさを露にするものかと驚くばかりです。

とはいえ我々も、トランプ政権に言われるまでもなく、世界の各地には、そのレベル感はさまざまですが、格差や貧困、分断、過剰生産 (過剰生産は資本の片寄った小太りを生むだけで、必ずしも人々を幸せにするものではありません) といった問題が存在することは既に承知しております。トランプ政権の小賢しさにはしばらくはお付き合いしながらも、我々は我々自身で各所の問題を自ら乗り越えて行くための道筋を探り出し一つずつ積み上げていく、これを繰り返していくしかありません。トランプ関税の問題も敷衍しながら関連を理解、想像することが、日々のNPOとしての社会課題への対処・解決への取り組みにもつながっていくのではないかと思います。

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